『殿さまとスティッチ』が終了して思うこととか
12月21日に殿さまとスティッチが最終回を迎えました。
一年通してリアルタイムで追って見たものの、正直何だったのか一度もわからなかったこの作品。
元々一年だけの契約でそれ以上連載予定がなかったのか・最短一年で人気があれば延長とかもあったのか。
真実は関係者のみぞ知るといったところでしょう。
前回最終回の感想記事は更新したので、本当だったらまとめとして、良かったところを挙げていくのでしょうが、一年間を振り返っても、良かった点どころか『それはどうなの…?』と思わせる点があちらこちらに散らばっているだけでした。
ですのでどうしようもないので
【どこが駄目だったのか・どうして話題にならなかったのか】
をまとめて終わりにしたいと思います。
*『そんなことない!!殿さまとスティッチはリロステ映画よりも泣ける大傑作だ!』というような感想をお持ちの方は、ここで戻るボタンを押してお帰りください。
*『原作ファンなんだから、そのキャラが出ている作品は全部褒めるべき。全部受け入れてこそファン』というお考えの方も、戻るボタンをどうぞ。
*過去記事からもわかる通り、全て感情論で語ります。この作品の関係者でもないから全て推察です。正しさもへったくれもない私個人の感想です。
さて、この漫画。
【これが残念だった原因だ!】
と1つだけに原因があるわけではないと私は考えています。
大雑把にこの記事では
①K社×ソフト面=主に企画そのものについて
②作者×ソフト面=漫画のストーリーや作画以外の部分
③作者×ハード面=作画
④K社×ハード面=単行本について
と区分を設けて垂れ流そうかと思います。
ソフト面というのは目に見えない無形のもの、ハード面は形あるもの、という感じで話進めます。
①K社×ソフト面
(1)企画そのものについて
はっきりと言えば、何がやりたかったのかがわからない、でした。
スティッチ関連フランチャイズ過去作ですら、一応作られた理由や目的がありました。
可能性として考えられるのは、フォロワーさんから頂いた意見の1つにあった、
『コミックDAYSは、名作のスピンオフ的なものに着手しがちである』
という部分でしょうか。
また、最近の流行りでもある『ギャルと恐竜』『おじさまと猫』といったような異色の組み合わせを、一般的にお堅いイメージのあるディズニーという企業のキャラを使ったギャグ漫画にすれば、目を引くであろうという、ちょっとした大喜利みたいな発想だったのかもしれません。
一話や短期連載ならともかく、そんな大喜利で一年間持たせるにはかなり限界がありますよ。
そしてこれ、散々言われ尽くしていますが、リロ・アンド・スティッチのキャラクターでやる必要性、皆無ですよね??
スティッチが選ばれた理由として考えられるのは
●1……知名度・人気がそこそこある
●2……映画予告編でもある通り、トリッキーなキャラクターである。何をさせてもOKだと思ってしまった。
●3……老若男女幅広いターゲット層を狙える
等でしょうか。
ただしこの考えで選んでしまい、過去リロステ作品がどのような扱いを受けどういった目で見られているのかを業界研究しなかった結果、完全に裏目に出てしまったという感じです。
●1……知名度・人気がそこそこある
→それなりにファンが多いということ。
上に書いた通り、今までフランチャイズ作品でどんな扱いを受け、一部ファンの目が厳しくなっているのを知らずに進めてしまった。
メインターゲット層でないが故に、『少なくともこの作品はリロステを侮辱しているわけではない。この漫画は原作に敬意を払っており無害である』と言った目配せを全くしなかったどころか、歩みよらず原作ファンに尻を向けたような表現が多かった。(例えです。)
●2……映画予告編でもある通り、トリッキーなキャラクターである。何をさせてもOKだと思ってしまった。
→上に同じ。『何をさせてもOK』の先の結果を推測できなかった。
『何をさせてもOK』は『何をさせてもOK』って意味じゃねぇよ!!!!!スティッチはフリー素材じゃねぇよ!!!!
●3……老若男女幅広いターゲット層を狙える
→後ろに書く、ターゲット層・ペルソナを設定しないまま話を進め、作者に投げてしまった。
(2)ペルソナ
いわゆるターゲット層の具体的な像のことです。
明確なイメージを関係者全員で共有することによって、方向性のブレをなくすというもの。
漫画を依頼するにあたって、これをガッツリ毎回決めているかどうかは不明ですが、企画としては決めるべきだったんでしょうし、あまりに大雑把にしか決められていなかった。
おそらく『原作リロステファン以外は全部ターゲット!』というざっくりとした感じで作者に投げたんじゃないでしょうか?
そんな【犯人は20代~80代の人間です】位の適当な感じで投げられたら、作者も困惑しますわ…w
そんな感じでフワフワした結果、漫画連載媒体が
【コミックDAYS】【電子版Vivi】【ニコニコ静画】としっちゃかめっちゃかな方向に広がり、更に【ツムツムゲーム内で宣伝】と明後日へジャンプしてしまったのでしょうか。
その宣伝の方向に漫画本編が沿っていなかったので、そりゃあ響くもんも響かないですよ。
②作者×ソフト面
漫画のストーリーなどいわゆる作画以外の部分。
(1)設定
例えば日本製作のオキナワ版。
舞台を沖縄にした理由の1つとしては、南国であり且つ『イチャリバチョーデー』の精神が、ハワイとオハナの精神に似通ったところがあるという理由がありました。
安直過ぎないか?ということは置いておいて、一応、ちゃんとした理由がありました。
長くなってしまうので省きますが、砂の惑星も中国版も、舞台をそれぞれの土地に設定した理由がきちんとありました。
一方の殿さまとスティッチ。
舞台を戦国時代に設定した理由は、作者自身がインタビューでこう答えています。
Q:「殿さまとスティッチ」のストーリーはどのように生まれたのですか?
A:大好きな作品に登場するスティッチのことを考えながら、担当編集の方といろんな雑談をしているなかで、時代劇の話をした時に思い付きました。(以下必要ないから略)
~講談社 ディズニーファン 2020年8月号より~
雑談の産物だそうです………
本当に私個人の感情でしかないので、公平性と冷静を著しく欠いて申し訳ないのですが、
自分の好きな作品を舞台設定適当に変えられて笑いのネタにされただけでも腹が立っているのに、それを堂々と『雑談して思い付きました』って言われて、怒るなっていうほうが難しいんですが???
というかそれが真実だとしても、それを雑誌ディズニーファンという、『絶対にファンが読むであろう雑誌』のインタビューで堂々と答えてしまうところに、かなりのヤバさを感じるんですが?
このインタビューを読む限り、作者のところに話が行ったときは、既にスティッチを使うというところまでは決定していた。そして上の通り、雑談で決まった。
他のフランチャイズ作品は少なくとも理由があったけど、これは戦国時代設定である必要性が皆無だった。
だから【戦国時代ならでは】の見せ方も表現もなく、目を通した人の印象にもあまり残らなかったのではないかと思いました。
雑談って…なによ……
(2)スティッチ
上の項目とほぼ同じですが。
そもそもこの漫画、【冷酷非情な殿様が可愛らしい生き物を見てときめく】ことしか描いていないので、スティッチである必要性が全くない。
愛玩動物。
それなら戦国の民にはその辺のタヌキでも食わせとけ!!
タヌキ(アナグマ)鍋はおいしくておすすめです(*´ω`*)
(3)リスペクト
大体のスピンオフ作品は、元にしている作品がある以上、自分の作品ではないから敬意なりなんなりは表現したりします。
また、直接のターゲット層ではないにしても原作ファンが見ていることは想定できるでしょうし、多少なりとも批判がくるのは目に見えているから、オマージュやリスペクトといった所謂【目配せ】的な演出を入れたりして、叩かれ対策をしたりするのですが。
しない。ない。
ないどころか、スティッチの生き物としての設定を丸々消してしまう。
辛うじて目配せのつもりだったんであろうものが、
『絵巻の中に出てくる家族思いの少女の名前がお花(数コマ終了)』
『一話だけ出てきた村の少女の名前が"しほ"(発音的におそらくリロ意識)』
これ位でしょうか?
目配せにしても表現ずれているというか、ウインクで目配せしたつもりが両目瞑って電柱に激突している感じです。
ちなみに最終回間際の映画と全く同じ展開の流れは、オマージュでもパロディでもなく、ただの真似事・形だけ借りてきた劣化にしか見えませんでした。
(4)ギャグセンス
ここは読む人それぞれですが。
『上半身裸の男性がにゃんにゃんポーズする』
『下ネタを入れる』
『民が努力したものを壊したことを、叱るどころか褒めて民を更に酷使する』
挙げ出したらキリないんですが、こういったものを笑いとして入れていて、今の時代ウケるの少数じゃないですかね…
前述した通り、読ませる層が定まっていなかったから作者のギャグセンス頼りになってしまったのかなと。
(5)ストーリー
基本的には一話簡潔のギャグ漫画です。
一話簡潔の強みは、どの話からでも入れるというところ。逆に短所は、ほぼ話が進まないというところ。
話が進まないということは、漫画本編に面白さがないと次の話が気にならず読者が離脱していくのですが、肝心の面白さが前述したギャグセンス頼り。
そして話の内容は『ステちゃんかわいい(はぁと)』がメインの人間主軸の話で、スティッチは添えられた草程度の存在。
話も起承転結がしっかりしていないだけじゃなく、いつの間にか設定が増えたり説明なく変更していたり、ギャグと感動を半端に行ったりきたり……
『つまらないから読むの止めよう』じゃなくて、印象に残らないから自然と存在が忘れられていたんじゃないかなと思いました。
(単行本発売の時に、『まだやってたんだ』という呟きをチラホラ見かけました)
③作者×ハード面
主に漫画の作画に関して。
『やわらかいイラスト普段かかない方だから、そもそもリロステキャラ描くの向いてなかったんだろうな』とかそういうのは個人の好みだから言及はしません。
それ以外の部分についてです。
(1)GIF
この漫画の売りの1つとして、
【漫画の一部がGIFのように動く】
というものがありました。
Web漫画だからこその技法ですし、とてもインパクトはありました。ここは面白い表現だと思いました。
しかし、正直一発芸位の印象しか与えられなかったのではないかなと思いました。
おそらく作者も段々どこを動かすべきかわからなくなっていたんじゃないでしょうか?
後半になるにつれ、動く事で画面が生きるわけでもない部分で動かしたり、苦しい部分が多々ありました。
とある話の、噴水のキラメキだけが動いていた時は、流石にどうしようもなかったんだろうなと若干同情しました若干。
また、このGIF部分を作るのにかなりの枚数を描いていたらしいです。(作者のTwitter談)
絶対結構な負担になっていただろうなと思います。
枚数を描くことの負担とインパクト、両方を考えても一年間長期でやるものではなかったんじゃないかと思います。
(2)作画の違いからのディズニー危険思想
ここは個人感情入りまくりなところです。
読み飛ばしてもらっても大丈夫です。
一番最初の作画と最後の作画、そして単行本の表紙の作画があまりに違い過ぎる。
リロステ詳しくない人から『作画外注するようになったんですか?』と疑われる位。
描きなれていったというなら、それは喜ばしいことなんでしょうが、少なくとも第1話のあれはお世辞にも『上手い』とは言えない。
私は、この第1話の作画の扱いとそれにOKを出したことから、どこか【ディズニーは厳しい/危ない思想】をネタにしているんじゃないかと感じてしまいました。
この作品、いたるところで【ディズニー公認】を強くだして宣伝しています。監修じゃないところがみそ。
つまり、作画が公式以下のクオリティなのは宣伝する側もわかっているということです。『こんなクオリティと設定だけどディズニーOKしてますよ笑』という意味で出しています。
また「これでディズニー怒らないのかよww」という趣向のツイートに対して、作者自身が「公認なので大丈夫です(*´ω`*)」といった返信をしているところを見ると、企画側に『ネズミーは危ない・消される』といった偏った考えが無意識にあったんじゃないかと思ってしまいます。
そんな嘲笑のネタにされて喜ぶファンはいません。
最初がそんな感じだったから、スタートから嫌悪感向けられて読まれなかった可能性もあるんじゃないでしょうか。
④K社×ハード面
主に単行本関連に関して。
(1)値段
まぁ、高いです。
通常版で900円+税。
A5サイズで版権とかを考えれば妥当なのかもしれませんが、皆さん単行本一冊の値段はジャンプ作品位って思っていそうですから、一冊にほぼ1000円となると、手に取るのはちょっと戸惑ってしまったんではないでしょうか。
しかも一話簡潔の話だから、別に前の話を繰り返し見なくても、無料公開されている最新話を見れば済む。
そこで単行本買わなくていいかなってなった人はいると思います。
値段と内容が釣り合っているかどうかは人それぞれなのでノータッチです。
(2)電子書籍
今のところ、この漫画は紙の単行本のみの発売で電子書籍はありません。
このご時世で電子書籍を出せなかったのは、結構な機会損失だったんじゃないかなとは思います。作者も出したいと言っていたらしいですけど、結局意見通らなかったみたいですし。
ちなみに私のブログは、どの検索ワードで訪問したか見れるようにしています。単行本発売日近くなると1日に数人は【殿様とスティッチ 電子書籍】で検索してブログにきていました。だから需要が全くないわけではないと思うんですがね。
可能性としては
・電子書籍にしてもWeb連載時と同様にGIFで動かせるわけではないので、そこの誤解回避の為にあえて出さなかった
・通常版と電子書籍を出すより、通常版と特装版を出して両方を購入してもらう計画だった
とかでしょうか?
いや、特装版は1300円越えるし、付属のステッカーは描きおろしでもなんでもない、最初の描きなれていない絵柄ですし、それだけの為に両種類買うのは、余程のファンか余程のアホかどちらかな気がします。
ちなみに私は余程のアホに分類されます。
付属のステッカーについては、以前の記事でも語りましたが、とてもデザインが残念なことになっています。
主にこれ。
詳しくは下記記事参照。
⑤まとめ
ここまでダラダラとした駄文にお付き合いいただきありがとうございました。
何をどう感じるかは人それぞれですが、これが私の感じたことです。
そして連載は終わった。ただそれだけです。
ここまで感想記事やまとめを書き記したのは、少なくともこの漫画に良くない印象を持っていた人がいる、ということを残しておきたかったからです。
Twitterだとどうしても流れてしまいますし、やっぱり最近リロステに興味を持たれた方は、オキナワ版や鳥取での炎上についてをリアルタイムで経験していない為知らないという方もいらっしゃるみたいでしたので。
おそらくまた同じことを繰り返されるんだろうなと若干諦めかけている部分もあるのですが、次回こういうことがあっても、最低でも原作に意識を向けてもらいたいなと思いました。
長々とありがとうございました。
~和田洋人先生へ~
一年間の連載、お疲れ様でした。
様々な理由で連載が途中で終わる漫画も多い中、連載を無事終えられたようで何よりです。
一度こういった形で縁があった以上、私はずっとこの漫画については語り継いでいくと思います。
ちょっと申し訳ないんですが、これに関してはこの漫画のみならず、私の特徴みたいなものでもあるんで諦めてください。
次回作も考え中とのことですので、頑張ってください。
漫画家という職業上、腰痛・運動不足・偏った食事・エナジードリンクの多用等あるかとは思いますが、どうぞお体を大事にご自愛ください。
追伸:京都に足腰丈夫になる神社があるみたいですよ